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第55回 NOも言える添乗指導員
所属する運送会社において、事故やクレーム等の失敗事例から生まれた社内ルールの履行状況を、車内で確認できるのが添乗指導のメリット。
一般的に、車格・車種・荷姿・運行形態が同じであれば、過去に発生した事故を誰かが繰り返してしまうことが多い。
だから過去の苦い経験を貴重な経験に変えるために、社内ルールが生まれます。
その社内ルールを守ることで、同じような事故を防止することができるのです。
道路交通法を守っているかは警察も確認してくれますが、社内で決めたルールについては社内の人しか指導してくれません。
私たち添乗指導員の仕事は「現状を見て、現場で改善すること」ですが、添乗指導員の最大の使命とは「ドライバーが改善しない場合には、管理者に処遇の改善を進言すること」です。
もちろん事故を起こす可能性が高いと思われるドライバーは指導対象です。
しかし、危険の理解や安全への努力が見られず、重大事故を起こしそうなドライバーだと判断した場合には、違った形での再教育を提言します。
これは、自身が安全を軽視する行動は、周囲にも迷惑を掛けることを重視してのこと。
大きな事故になる前に。
大きなロスになる前に。
誰もが交通事故を起こしたくないと思っていますが、誰しもがヒューマンエラーにつながる体調(生理的)と感情(心理的)の要因があります。
安全とは自分を知ることから始まります。
ひとりで仕事をする時間が長いドライバーだからこそ、自分の変化に気づき自ら修正できる能力が求められます。
車内で発生するヒューマンエラーは交通事故の原因になり、第三者をも巻き込むような多大なリスクが伴います。
よって、ドライバーという職業は一見誰にでもできそうな仕事かもしれませんが、誰しもがやって良い仕事ではないということです。
ですから添乗指導時には「走れるようにする」だけでなく、「事故をする前に止める」ことも求められます。
止めることとは、「事故を起こさないドライバーとしての適性に欠ける=ドライバー失格」との決断をくだすこと。
これは多大な勇気を要する決断ですが、私たちは個々の適性を見極めたうえで自信を持って進言します。
たとえドライバー不足に悩む運送会社であっても「絶対に交通事故を起こすドライバー」なら、絶対に雇用したくないはずですから。
安全運転と同様に、安全管理も「走り方より止まり方」が大切。
そのために、私たちは“NOも言える添乗指導員”を目指しています。
ありがとうございました。
次回は9月4日(金)更新予定です。
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