第9回 点呼は手段で安全が目的

乗務する車(当たる標的)が大きくて走行距離(道の上にいる時間)が長いトラックドライバー。

だから交通事故に遭う確率が高いことは残念ながら否めない。

交通事故に遭わない安全対策には「運転する人(体調と感情)」と「運転する車両(整備)」のメンテナンスが必須です。

運送会社において、人と車両の状態を確認する機会が始業点呼。

終業点呼は本日の状態を確認して、明日への情報収集の機会とする。

翌日の始業点呼では、点呼者が昨日の終業点呼時からの違い(異常)を探す。

そのためには「点呼者からの指示」より「ドライバーへの質問」を勧めています。

指示に対する返事の声を確認するだけでなく、「ドライバーが考えて話す内容」を聴くことで、疲労度や精神状態や起床後の時間経過などが見えてきますから。

運送会社の管理者の責務を要約するとこの2点。

・ドライバーを無事に運行させること(始業点呼)

・ドライバーが仕事を終えて無事に自宅へ戻すこと(終業点呼)

運送会社のドライバーの責務を要約するとこの2点。

・体調と感情をできる限り整えて出社すること(始業点呼)

・無事に運行を終えて帰社すること(終業点呼)

安全確保に不可欠な人の体調や感情は、デジタルタコグラフやドライブレコーダーでは見抜けません。

体調や感情が低下すると安全確認が横着になったり、方向指示器を出さずに車線変更を行うなど安全行動が面倒になりがち。

荷役作業中の確認不足により労災事故につながることも危惧(きぐ)されます。

商品破損や誤配送の発生率も・・・。

そこで点呼を見直そう!

点呼を嫌がる(面倒に思う)ドライバーも事故や病気にはなりたくないはず。

誰もが「安全でありたい」「健康でありたい」と願っているはず。

そのための手段が点呼です。

安全性向上の機器を見渡せばデジタルタコグラフやドライブレコーダーが進化していますが、健康への効果的な対策は点呼と健康診断が代表的な位置付けであることは変わりません。

高齢ドライバーが増加傾向という運送業界の構造も追い風にすべく「健康のために点呼をする」→「安全になれて健康を維持できる」との図式は伝わりやすいと思います。

健康に関心が高いと思われる高齢ドライバー(ベテランドライバー)が率先して点呼を受ける姿勢、を若いドライバーも真似ることで社内の安全性が向上するかも。

その他、良質な睡眠や残酒の危険に関する情報を運送会社から家庭に届けて、ご家族にもドライバーの体調管理に理解や協力をしてもらうこともよいでしょう。

近ごろの現場では、点呼が目的になっているような行動が散見されます。

だから最後にもう一度。

点呼は手段で安全が目的です。

点呼は手段で健康が目的です。

健康が手段で安全が目的です。

安全が手段で健康が目的です。

ありがとうございました。

次回は10月18日(金)更新の予定です。

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この記事の著者

株式会社プロデキューブ 代表取締役

高柳 勝二

運送会社の管理者育成と安全教育をサポートしている株式会社プロデキューブの代表取締役。
前職は中堅運送会社にドライバーとして入社し18年間勤務。
安全管理・品質管理・開発営業などの実務経験が豊富な物流インストラクター。
現在ではドライバーの交通事故防止による利益確保と輸送品質の向上による単価の向上で得た原資によって、働き方改革を実現するまでを事業領域として、現場を親身にサポートしている。
中小運送会社からの依頼が多い“提案型”研修は、受講されたドライバーや管理者からの「おもしろい・眠くならない・わかりやすい」との評判が口コミで広がり、各社内で開催される社員研修の外部講師として全国45都道府県で講演。
また、全日本トラック協会主催の「全国トラック運送事業者大会」における交通安全対策推進の分科会で、7年連続コーディネータを担当(2013年札幌開催:2014年福岡開催:2015年金沢開催:2016年度米子開催:2017年仙台開催:2018年高松開催:2019年千葉開催)。
2013年度:全日本トラック協会「トラック運送事業における運行管理者のあり方研究会」委員
2015年度:国土交通省「自動車運送事業に係る交通事故対策検討会ワーキンググループ」委員
2016年度:「貸切バス運転者に対して行う指導及び監督の改正検討ワーキンググループ」委員
2016年度より現在:国土交通省「自動車運送事業に係る交通事故対策検討会」委員
2017年度より現在:熊本県トラック協会 専門アドバイザー(企業経営・労務管理)
各都道府県のトラック協会や青年部会、支部や協同組合単位での各研修会で講演多数。
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