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第22回 運送業への二つの思い
私は21歳から運送会社で働き、トラックに乗っていました。
18年間働いて2008年の春に“卒業”させて頂き、現在プロデキューブを創業して7年目です。
運送業に対しては、自分の「ボコウ」のような思いです。
「ボコウ」には二つ意味があります。
一つ目は「長らく身を置いた運送業界は自分の母港」であるとの思い。
二つ目は「勤めていた運送会社は自分の母校」であるとの思い。
ですから運送業は常に自分が戻るべき所であり、今の自分を育てて頂いた大切な所です。
時々、トラックに乗っていた当時を思い出します。
当時は時間に遅れず商品を潰さなければ「何をやっても」「何をやらなくても」ほとんどクレームにはならなかった時代だったのかもしれません。
現代では挨拶や身だしなみ等の接客マナーも問われます。
その対応は細かいことで面倒なことかもしれませんが、それは運送会社への期待感が高まっていると受け止めています。
同時にドライバーへの期待値が上がっている証拠とも捉えています。
だから運送会社が多くのことを求められる(期待される)ようになったのは、喜ばしいことかもしれません。
そういうお客様を含む世間様の期待に応える方法を、運送会社がサービスや商品にできないだろうかと考えています。
たとえば店舗等の施設で来客を誘導するガードマン。
黙って誘導だけをしているガードマンと、笑顔で「いらっしゃいませ」と言えるガードマンがいるとしたら、どちらの価値が高くてどちらが選ばれるのか?
運送会社は言うまでもなく安全が第一ですが、サービス業として品質にも取り組むべきだと思います。
また、「安全」と「品質」と両方の研修講師を担当していてどちらが難しいのかと聞かれると、私は「安全の方が簡単」という表現をしています。
比較にならないほど品質の方が難しい。
なぜかと言うと・・・。
例えばドライバーが10人いて「交通事故を起こしたくない人は挙手してください」と言うと、全員が迷うことなく「当然だ」と言わんばかりに、すぐに手が上がります。
次に「お客様から好かれたい人は挙手してください」と言うと、一瞬躊躇されることが多い。
好かれるためには「やりたくないこともやらなければならない」とか、「面倒そうで自分には無理」と少し考えた末に「嫌われるよりはいいかな」と、ゆっくり手が上がることが多いのです。
だからこそ、安全だけでなく品質にも取り組まなくてはならない。
運送業に対して「きつい・汚い・危険」の3Kイメージも有るようですが、私がトラックドライバー時に感じていたのは「気楽・気まま・稼げる」の3Kでした。
それが今では「気楽じゃなくなった、気ままじゃなくなった、残念ながら稼げなくなった」
だからと言って過去に戻すのが理想とするのではなく、運送業界が新たなサービス業界へ「進化」できればと考えています。
「人と接しない仕事」ではなく「人と接する仕事」へ。
「見られない仕事」ではなく「魅せる仕事」へ。
そのような考え方の運送会社には求職者や顧客が集まり、景気の波にも動じずに、いつの時代もいつの時代までも生き残ると思います。
ありがとうございました。
次回は4月18日(金)更新の予定です。
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