第14回 「利益」の本質を捉え直すことで「利益」を上げる

「利益」とは何でしょうか?

多くの方が、企業にとって最も大切なものと答えるはずです。
特に、業績が悪化している会社は、「とにかく利益を捻出する」ことが至上命題になっているでしょう。

一方、業績が比較的安定している会社、また企業理念としては崇高な使命を掲げている企業であっても、「利益額・率」などの定量指標だけで管理していく誘惑は根強くあります。

会話の中では、利益以外に大切なことについて話し合われていても、現場の業績目標や管理は「定量的な数値」のみで測られやすくなる。
結局、今期上手く行ったか行かないかは、「売上」「利益」「利益率」で判断した方が管理は効率的に行えるからかもしれません。

確かに、利益がなければ、よい人材も採用できない、給料も払えない、有効な投資もできない。さらに、会社内のコミュニティをいきいきと働きがいのある場にすることも、利益が上がっていなければできないことです。

しかし、現場で「利益創出」が第一義に踊り出てしまう会社は、その成長力や価値を自ら食いつぶしていってしまう、というリスクがあります。

ドラッカーは、20年以上前に書かれた著書で以下のように述べています。

「利益の最大化のみを目的化する企業は、短期的視点からのみマネジメントされるようになる。その結果、企業がもつ富の増殖機能は破壊されないまでも、大きく傷つく。結局は業績が悪化していく。しかもかなり速く悪化していく。」
(ドラッカー 「ポスト資本主義社会」ダイヤモンド社)

ここでいう、企業の「富の増殖機能」とは何でしょうか。

それは、
「顧客にとっての真の価値は何かを探求し、製品やサービスに転換する力」
「従業員の能力を最大限に引き出し、独創性のある製品・サービスを生む力」
「顧客の高い満足感、信頼感、共感」
などです。

本来、これらをとことん追求し、磨いた「結果」として、持続的な利益が生まれてくるはずです。

一方で、利益を第一義に管理をしてしまうと、どうなるでしょうか。
本当に独創的な価値を創出するために必要な手間ひま、社内での対話、顧客との対話、人材の育成といった必要な時間や投資まで削ってしまいやすくなります。

営業的には、強引な押し込み営業や値引き合戦も、結果的には顧客からの信頼残高を低下させるリスクがあります。

結果、毎年利益をなんとか捻出していても、大きな発展ができない。新しい事業を創造する社風が育まれない。利益を出し続けていても突然の不振に陥ることもあるでしょう。

私自身、事業運営を経験した中で実感したことがあります。それは、

「利益を上げることを目的としても、確かな利益はなかなか生まれない」

ということです。

仮に売り上げや利益が上がったとしても、結果として顧客や社会からの評判は上がっていなかったり、人が離脱してしまったり。
長期的に富を創出する価値が蓄積されません。

業績が厳しい時こそ、勇気をもって「問い」を変えることが大事だと思います。

「どうすればもっと売上と利益が生み出せるか?」

という問いを、

「我が社にしかできなくて、顧客にとってすごく価値の高いことは何なのか?」

という問いへ、会社全体で変えていくことで、「確かな利益」が生まれます。

さらに業績の評価においても、後者の問いに対して明確な行動と成果を生み出せたかどうかを、利益とあわせて真剣に確認し合うことが不可欠です。

大企業、中小企業含め、日本企業には、まだまだ利益を生み出せる価値が眠っています。
2013年は、政治や経済政策の力だけでなく、企業の底力が改めて発揮される年になるよう、頑張っていきましょう。

次回は2月7日(木)の更新予定です。

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この記事の著者

PROJECT INITIATIVE株式会社 代表取締役

藤田 勝利

1972年生まれ。上智大学卒業後、住友商事、アクセンチュアを経て、クレアモント大学院大学 P.F ドラッカー経営大学院にて経営学修士号取得。ベンチャー企業執行役員として事業開発に従事後、2010年独立。次世代経営リーダー育成や新規事業の分野で幅広く活動中。著書:「ドラッカー・スクールで学んだ本当のマネジメント」(日本実業出版社)
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