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第7回 「指示統制型」マネジメントの限界とは?
先日、マネジメント勉強会で話題に上がったテーマについて書かせていただきます。
それは、
「指示統制型のマネジメントか、自発創造型のマネジメントか」
ということです。
一般には、上位職者が明確に指示をして結果を出す指示統制型のマネジメントよりも、社員一人一人が自発的にアイディアを出して、創造的に仕事をしていく形が「よい」とされています。
しかし、ご存知のように、多くの経営の現場で実行されているのは、基本的には「指示統制型」のマネジメントが殆どです。特に、景気が後退し、受注や利益が伸びなくなるとますます管理的体質が増すのが、組織の特長です。
コスト管理、業務管理(日報等)、勤務管理、顧客管理、コンプライアンス管理などなど・・システムへの入力や遵守すべきルールが増えていく傾向があります。
ある中小企業で、営業部隊の時間の使い方を調べてみたところ、実際に顧客への提案や折衝関連に使えている時間は全体の3割弱であるという結果も出ました。
それほど、現代企業の多くが「マネジメント=統制管理」という偏ったイメージで運営されているように思います。
ここで、私は奇麗ごとで「どの会社も、自発創造型マネジメントに一気に切り替えよう」と唱えるつもりはありません。指示統制型にもある意味での「メリット」が認められているからからです。
例えば、短期でミスがなくなったり、利益が確保できたりするなど、直近の結果が速く出る、ということです。つまり、「スピード、効率性」の点で見れば、指示統制型が適していると言えるかもしれません。(少なくともそう主張する声は無視できません)
しかし、指示統制型の企業が、ほぼ決まって行き詰まるポイントがあります。それは、特に中小企業で人数が増えたり、業態が多様になったりした際に、「社員が自発的に企画をし、マネジメントしていく」という組織に移行していきにくい、ということです。
結果、経営者からは、「うちの社員は全く自発性がない、創造的な発想が生まれてこない」といった悩みが多く聞かれるようになります。しかし、成長期に「統制型」で一気に知名度を上げ、顧客を増やしてこられたことも事実です。ある時期に選択したマネジメントの型が、今日の組織の姿になっていることを忘れてはいけません。
ドラッカーも、様々な歴史的経営者やリーダーの例を用いて、「指示統制型マネジメントの功罪、限界」について述べています。彼の表現で面白いのは、「指示統制型」でマネジメントされた組織は、例えるなら「亀の甲羅のようだ」という話です。ある意味、順調にいっているときは、「亀の甲羅」のようにしっかりと頑強です。しかし、それ以上は全く大きくならないし形も変わらない。あたかも、顧客のニーズや社会環境が変わっても変化することができない会社の限界と似ています。
サッカーの日本代表元監督の岡田武史さんは、大変研究熱心で、ドラッカーの著書もよく読まれています。Jリーグ監督時代にも、コンサドーレ札幌や横浜F.マリノスをリーグ優勝に導くなど、輝かしい実績を残しています。彼が、面白いことを言っています。
「自分はもともと理詰めで戦術を徹底して教え込むのが得意。それによって勝利を手にすることもできたし、優勝もできた。しかし、あるとき、勝っていても全く選手の目がいきいきとしていないことに気づいた。結果は出るが、決められたプレーしかせず、創造性もない。このようなサッカーを自分はやりたいと思っていたわけではないと思いなおし、自由にやらせるサッカーに変更してみた。結果は、開幕4連敗という厳しい現実が待っていた。」
組織のマネジメントも同様ではないでしょうか。指示統制型で動かすことで、「短期的に成長している絵」を描くことはできる。しかし、このコラムでも再三書いてきたように、マネジメントの本質は「創造」。将来長期にわたって創造的な組織でいるために、スピードと効率性を犠牲にしても、社員の創造性を引き出す工夫やゆとりを初期の段階から入れていかないと、取り返しのつかない状態になります。
是非、皆さんの組織でも考えていただきたいです。
次回は7月5日(木)の更新予定です。