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営業のデジタルトランスフォーメーション(DX)で実現する変革とは
近年、事業規模や業種を問わず「デジタルトランスフォーメーション(DX)」に注目している企業が増加しています。DXによってビジネスモデルやプロセスを変革できる職種はさまざまですが、その中でも特に営業においてはコア事業に直結するため、利益増大に直結するとして大きな期待が寄せられています。
そこで今回は、営業におけるDXの実現のポイントと重要なITツールについて解説します。
目次
デジタルトランスフォーメーション(DX)とは
営業におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)を解説する前に、ビジネスシーンで用いられることが多い、DXそのものの定義と必要性について紹介します。
広義のデジタルトランスフォーメーション(DX)の意味
デジタルトランスフォーメーション(DX)は、2004年にスウェーデンにあるウメオ大学のエリック・ストルターマン教授が初めて提唱しました。「テクノロジーによって人々の生活がより豊かになる」という意味であり、デジタル技術による生活そのものの変革を指しています。
ビジネスにおけるデジタルトランスフォーメーション(DX)の意味
日本のビジネスシーンでDXが頻繁に使われるようになったのは、2018年2月に経済産業省が発表した「デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン(DX推進ガイドライン)」がきっかけと考えられています。
このガイドラインにおけるDXは前述したエリック・ストルターマン教授が提唱した内容とは、若干意味が異なっているので注意が必要です。経済産業省は同ガイドラインにてDXを「データとデジタル技術を活用して製品やサービス、ビジネスモデル、業務そのものや組織、プロセス、企業文化を変革すること」と定義しています。
つまり、日本の企業の利益拡大・競争力強化が最終的な目的であり、そのためにデジタル技術やデータを用いて、新規事業の創出やプロセス改善などの変革を目指すとしているのです。企業活動に特化したDXの定義であることから、「狭義のDX」とされることもあります。
営業のデジタルトランスフォーメーション(DX)の必要性
DXによって変革すべきプロセスはさまざまですが、その中でもなぜ、営業部門においてその必要性が高いと考えられているのでしょうか。最も大きな理由の一つが多くの企業にとって、営業活動は「売上や利益に直結する」からといえるでしょう。
例えば、従来のフロントセールスのように顧客のもとに訪問しなければならない場合、移動時間や交通費・出張旅費といったコストが発生します。DXによって営業プロセスを変革して、移動時間を減らすことができれば、創出した時間を新たな顧客の獲得など、利益を生み出す活動に利用できるでしょう。これによって顧客獲得の機会損失を防ぐことができますし、経費削減によって利益率の向上も図れます。
一方、営業活動は属人化しやすく個人のノウハウやスキルの定量化が難しいため、間接業務と比べるとDXによる変革が難しい傾向があります。そのため、営業担当者一人一人の作業のデジタル化だけではなく、他部署も巻き込んだ営業フローや顧客獲得の仕組みからDXに取り組む必要があるのです。
営業活動のデジタルトランスフォーメーション(DX)を実現するポイント
営業活動のDXを実現するための三つのポイントを紹介します。いずれも部署を横断して組織単位で取り組む必要性が高いことを念頭において確認してみてください。
インサイドセールスによる営業活動
インサイドセールスとは、Webサイトからの問い合わせや電話、セミナーなどを通じて獲得した見込み顧客に対する営業手法のことです。インサイドセールスによって受注確度の高い見込み顧客(ホットリード)を育成し、営業担当者が商談を行うことでより効率的な営業活動が図れると期待されています。また、インサイドセールスには、デジタル技術であるメール、SNS、Web会議システムなどで見込み顧客と双方向のコミュニケーションが欠かせないことも覚えておきましょう。
インサイドセールスを導入することで、従来よりもフィールドセールスの負担を減らすことができ、効率的な営業活動の実現が図れるというメリットを得られます。さらにいつでもどこでも商談できるため、テレワークなども導入しやすく、働き方改革にも対応しやすいという利点も考えられます。
顧客育成(リードナーチャリング)による商談の創出
見込み客を育成して確度の高い商談を作り出すプロセスの導入や強化も、重要な営業活動の変革といえるでしょう。受注確度の高い顧客との商談を優先的に行うことは、営業活動の無駄を省き効率的な営業の実現に直結します。
「顧客育成(リードナーチャリング)」と呼ばれるプロセスでは、見込み顧客と定期的にコンタクトを取り続けて、顧客のニーズを把握して自社のサービスや商材に対する需要を高めることが重要になります。そのため、顧客ニーズの数値化や、連絡を取るためのメール、SNSといったツールが必要不可欠になるでしょう。また、リードナーチャリングは商談を創出して、営業担当者につなぐまでが主な役割とされています。
ナレッジベースによる営業ノウハウの蓄積
営業の現場で課題に挙がることが多い「営業ノウハウの蓄積」や「営業スキルの平準化」も、デジタル技術を活用すれば実現可能です。ナレッジベースとはクラウドストレージなどで、各営業担当者が所有する「顧客情報」などを蓄積し、組織で共有することです。
個人の成績が重視される営業現場では、顧客や案件管理を各担当者が管理する傾向が強いです。その結果、ブラックボックスになる傾向が強いのですが、ナレッジベースに各情報を集約することができれば、各案件の進捗(しんちょく)管理はもちろん、トップ営業の提案資料なども共有できるので、効率的に教育などに生かすことが可能です。
営業活動のデジタルトランスフォーメーション(DX)に有効なデジタルツール
Web会議システム
Web会議システムは、映像と音声をオンラインでつないで相手のコミュニケーションを図れるツールです。インサイドセールスやオンラインセールスといった相手先を訪問しない営業方法では、必須のツールであり、基本的にインターネット環境とマイク・カメラがあれば、いつでもどこでも商談や打ち合わせが可能になります。
フィールドセールスからWeb会議システムを活用した営業に移行するだけで、1日の商談件数の上限底上げや移動コストなどの削減につながります。Web会議システムはさまざまありますが、特にZoomミーティングは使いやすさに 優れており、世界中のビジネスシーンで活用されています。 削除をお願いいたします。
SFA
SFAは「Sales Force Automation」の略称で、日本語では営業支援システムという意味です。営業が商談を始めてから、クロージング(受注)するまでの工程を管理・支援するツールで、導入することで営業担当者の業務効率化、組織的な営業力のボトムアップなどが図れます。サービスによって機能はさまざまですが、顧客管理、案件管理、見積書作成、予実管理、タスク管理、日報作成支援などが搭載されていることが多いです。また、「Sales Force Assistant」のように案件管理を「見える化」することで、マネジメントの強化を図る機能が備わったSFAもあります。
CRM
CRMは「Customer Relationship Management」の略称で、日本語では「顧客関係管理」という意味です。既存顧客や見込み顧客を管理して、円滑なコミュニケーションや関係性の向上に役立てるためのツールです。メールやSNS、電話でのやりとりの記録や顧客の連絡先などの管理、購入履歴、商談状況などをまとめることでキャンペーンや販促、営業活動に活用します。顧客育成やクロージング後の顧客管理など、SFAの前後の工程をカバーする機能が備わっていることが多いです。
営業だけでなく、小売りなど店舗経営においても重要なツールであり、「betrend」のようにスマートフォンやポイントカード、アプリなどバラバラになりがちな顧客情報を一括管理できるシステムも多数導入されています。
営業は組織的なDXが必要
営業活動や営業部に関わるDXについて解説しました。営業はしばしばデジタル化における「最後の聖域」と称されるほど、アナログの作業が中心でDXによる変革が遅れている領域です。個々の取り組みはもちろん、組織的にデジタル技術やデータの活用を推進することが成功の重要なポイントといえるでしょう。大塚商会では営業活動に効果的なツールを多数取り扱っており、導入・運用も支援しています。営業のDXを検討する際は、ぜひお問い合わせください。
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