第2回 銀行が融資を絞ろうとする時の行動

銀行が融資を絞る。今までのように融資を簡単に出すのではなく、融資を絞っていく時に銀行がとる行動。それはどのような行動なのでしょうか。

■融資審査時に資料を追加で要求する

融資審査は稟議制、つまり審査を通すための書類が作られ、それが支店内で下から上に通され、最後は支店長、もしくは本部の部長などが決裁を行うことによって融資を行うかどうかを決める仕組みです。

融資を申し込んだ後、企業に対し追加資料を要求してくる。これはどのような行動なのでしょうか。

まず、稟議書を書く行員が、審査を通すためにもっと根拠となる資料をほしい、という場合です。

例えば企業の売上が上がる見込みがあるなら、部門別、顧客別、商品別にどのように上がっていく計画なのか、また大きな契約が決まったばかりならその契約書や発注書はどうか、というように、資料が要求されます。

稟議書を書く行員が追加資料を要求してくる場合は、審査を通そうとしてその根拠資料を追加で要求してくるのですから、特に問題ないでしょう。

気をつけなければならないのは、稟議書が下から上へ回覧されている、その途中で追加資料を要求される場合です。

直近の試算表がないから要求されるなど、資料不足の場合はやむをえないですが、今までに要求されたことのない資料を要求された場合。

例えば、決算書の「売掛金」で「その他」という項目があり、「その他」の内訳を要求された場合。
それが今回、はじめての要求だった場合。

銀行は、その企業を警戒しはじめています。そのため、銀行は疑念となるところを調べようと、追加資料を要求します。

このように、銀行はどのような考えから追加資料を要求してきているのか。
その要求する資料により、銀行が何を考えているのか、考えを読んでいくとよいでしょう。もしくは行員に「なぜその資料を要求するのですか?」と直接聞いてみてもよいでしょう。

■融資返済期間を今までに比べて短くする

例えば、今までであったら返済期間3年で融資してくれたのが、今回の融資は1年とされた場合。

つなぎ資金や季節資金、賞与資金など、返済期間を短くするのが当たり前の融資を除き、通常の運転資金で、返済期間を今までより短くされた場合、銀行はその企業を警戒し始めています。

企業の業況が芳(かんば)しくなく、今までのように返済期間3年で審査を通すことができないから、返済期間1年で融資審査を通して様子を見よう、という行動をとります。

■リスケジュールを銀行から勧めてくる

最近よく聞くのが、このケースです。リスケジュール、つまり既存の融資の返済金額の減額、猶予を銀行自ら勧めてくる。

以前なら、このようなことはありえなかったのですが、平成21年12月に中小企業金融円滑化法が施行されて以来、リスケジュールという手法は広がりました。

企業からの申し出だけでなく銀行からリスケジュールを勧めることも多くなったわけです。

リスケジュールを銀行から勧めてくるのは、銀行は新規の融資をその企業に出せなくなったことを意味します。

銀行は新規の融資を出すことができない。だからといってその企業は、利益を上げて得た現金から既存の融資の返済を行う力もない。そうするとすぐに資金不足が陥ってしまう。

そこを見越し、銀行は自ら、企業にリスケジュールを勧めてくるのです。

■新規融資の金利を今までより高くする

債務者区分、つまり銀行が融資先企業に付けているランクが悪い企業は、銀行は、融資に応じて引き当ててている貸倒引当金を多く積まなければならなくなります。

そうすると、銀行の利益は減少することになるため、それを少しでも補てんしようと、その企業への融資金利を引き上げます。

既存の融資金利は引き上げにくくても、新しく出す融資の金利は、今までの金利水準より高くすればよいわけです。

■融資を渋る

今までは簡単に融資が出たのに、最近は融資を渋るようになってきた。
融資の金額が希望どおり出なくなってきた。このケースでは、当然銀行はその企業への融資を絞るようになってきています。

■追い貸し

しかし銀行は、業況が厳しくなっている企業へも、融資を全く出さないわけではなく融資を出すことがあります。これを追い貸しと言います。

新規融資を出さずに、その企業が資金不足に陥って倒産となったら、既存の融資は返ってこなくなります。そうなると銀行としては既存の融資が貸し倒れてしまうので、そうならないよう、メイン銀行がその企業へ、資金不足に陥らないように追い貸しするのです。

しかし追い貸し状態で融資が出ているのでしたら、将来、銀行が全く融資を出さなくなる時も想定しておく必要があります。

銀行は追い貸しを繰り返すことができるわけではありません。銀行は、その企業への既存融資が返ってくることをあきらめる時があります。
そうなった場合、銀行はその企業の倒産を想定し、追い貸しはやめることになります。

追い貸しを受けられている時こそ、企業はしっかり経営改善を行って、銀行が安心して新規融資を行うことができるようにしていかなければなりません。


銀行が融資を絞ろうとする時にどういう行動に出るかを述べました。そのような行動が出た時は、その会社の業況はきっと、芳しくないことでしょう。
その場合、どのように経営改善を行って、業況を良くしていくのか、計画を立て銀行に説明していく必要があります。

次回は11月19日(火)更新予定です。

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この記事の著者

株式会社グラティチュード・トゥーユー 代表取締役

川北 英貴

株式会社グラティチュード・トゥーユー代表取締役。資金繰り改善コンサルタント。1974年、愛知県東海市生まれ。早稲田大学法学部卒業後、97年、大垣共立銀行入行、主に中小企業向け融資業務を行う。同行を退職後、2004年に株式会社フィナンシャル・インスティチュートを設立。代表を退いた後、2016年、株式会社グラティチュード・トゥーユー設立。中小企業向けに資金繰り改善・経営改善のコンサルティングを行う。著者は『絶対にカネ詰まりを起こさな い!資金繰りの教科書』他、合計11冊。
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