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第44回 管理者以上のドライバーは育たず
プロのドライバーという称され方はあっても、プロの管理者とは言われない。
部長代理や所長代理との役職名はあっても、社長代理は耳にしたことがない。
私たちは各地で開催している運送会社の管理者勉強会を通じて、「プロの管理者=社長代理」の育成を目指しています。
ドライバー不足と叫ばれることはあっても、管理者不足とは言われない。
ドライバーになりたいとの声は聞いたが、管理者になりたいとは少数派。
私は21歳で運送会社にドライバーとして入社して、数年後に管理者になりました。
最初に「管理者へ登用する」とのお話をいただいた時には、消極的だった覚えがあります。
「人付き合いが得意ではなかった」こともありトラックに乗り始めた私にとって、四六時中も社内で誰かと一緒に仕事をするのは想像を絶することでした。
管理者になりたての頃に辛かったこと。
自分が失敗していなくとも、管轄のドライバーが時間遅延や商品破損などの失敗をすれば謝らなければならないこと。
それが協力会社であったとしても、謝らなければならないこと。
若気の至りからか“自分主観の塊以上の鬼”のような当時の私には、苦痛を超えた屈辱の日々。
電話が鳴って受話器を取ると突然言葉が出なくなる“イップス状態”になったことも…。
また、自分では簡単にできることでも、誰かに教えるのは難しいもの。
例えば、自分では何度も行ったことがある積み込み先を、行ったことがない人に地図を描いて教えるのは面倒なもの。
会社名と車番と名前しか知らず、会ったこともない誰かに電話で積み込み場所を誘導して教えるのはさらに面倒なもの。
管理者が教えることを「難しい」や「面倒」と思えば、“教育”という人と人との接点から逃れるべく、ドライバーへの気遣いや会話も少なくなるようです。
管理することとは教育することであり、管理者とは教育者(指導者)です。
「伝える(教える)」と「確認する(育てる)」で教育であり、管理と書いてキョウイクと読みます。
管理者がドライバーを教育する方法を知らなければ、未経験者や若年者は雇用できず、これからの時代にトラックの稼働率低下は否めません。
教育に掛ける費用とは単なるコストとの見方ではなく。
教育ができる運送会社はトラックの稼働率が向上して、売上も向上するということ。
教育の度合いが売上の金額に表われるのです。
教育の結果で事故も減り、利益も向上します。
「管理者以上のドライバーは育たず、ドライバーは管理者を真似るもの」
管理者は自分ができていないことは、ドライバーにも注意をしないことが多い。
「管理者以上にドライバーが育てば、ドライバーは会社を辞めていく」
ドライバーが管理者を超える能力を持つと、ドライバーは管理者を見下して辞めていく。
だから管理者がドライバーに良い影響を与えるべく、自らが「動くマニュアル」になるために。
そして、管理者を「ドライバーが憧れる職種」に。
ドライバーが皆「管理者にはなりたくない=出世はしたくない」と思う運送会社では、意欲的な人は働きにくいはず。
管理者を鍛えて、ドライバーが「あの人のような管理者になりたい!」と憧れることで、ドライバーが意欲的に働くことができるはず。
管理職がドライバーから憧れられる職種にならないと、これからドライバーになろうとする人の中には、体力面等で将来に不安を感じて、運送業界に入ることを躊躇する人もいるのではないでしょうか。
管理者を「ドライバーが憧れる職種」にすることで、「ドライバーが憧れられる職業」になると思います。
私たちはそんな思いから各運送会社で日夜奮闘している管理者を応援すべく、全国で管理者勉強会を開催しています。
ありがとうございました。
次回は4月3日(金)を予定しております。
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