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第45回 愚痴や文句は意見に変わる
就労時間が長く、体力も消耗しがちなドライバーが毎月研修を受講するとなると、おそらく現場から反発の声が聞こえてくることを心配されるのではないでしょうか?
毎月1時間ずつ継続する研修には、たとえば毎月連続で交通事故を起こして事故報告書や反省文を毎月2時間掛けて書くのと同じぐらいに、「安全への関心が高まる効果」があります。
現代では当然のごとく、自らの安全を向上させるための研修に参加することにも、残業とみなすこともあるでしょう。
それは二世代前なら「自ら事故を起こして事故報告書を作成するのに要した時間に対して、自らが堂々と残業代を求めること」と似ているのではと、嘆く人もいたでしょう。
毎月同じ時期に運送会社を訪問していると、ドライバーと1対1で名前を呼び合いながら会話をする場面があります。
会話の場所は車庫での立ち話であったり、自販機前のベンチであったり、添乗指導を終えた運転室内であったり。
誰にも聞こえない安心感と、誰かに聴いてほしい期待感から、月に一度のペースで会う“顔見知り”の私たちに、「ちょっといいですか?」と心を開いて話をしてくれます。
その時には、たとえ愚痴や文句でも大歓迎!
口調は個人の愚痴や会社への文句であったとしても、中には全員で取り組むべき意見が有りますから。
愚痴は反抗かもしれませんが、会社に期待している証拠です。
文句は反論かもしれませんが、自分が頑張っている証拠です。
そう捉えれば、愚痴や文句の中に潜む“建設的な意見”を発見しやすくなります。
たとえば十人中で十人が同じ愚痴や文句を言っていたらどうでしょう。
それは間違いなく「社内で改善すべき対象項目」ではないでしょうか。
時に愚痴や文句をも聴き入れることは、運輸安全マネジメントに関する掲示物で多く登場する「経営トップは現場の意見に耳を傾けて・・・」とのフレーズに沿った行動だと言えます。
そして誰もが黙っているよりも、誰かに伝えた方がきっと楽になりますから。
「ドライバーの反応が無い=無関心」と「反論が無い=了解」は意味が違いますから。
管理者が言うところの「ドライバーが話してくれない」のではなく、管理者が聴いてくれないし、いくら話しても効果が見えないから「ドライバーが話さない」のでは・・・との場面も散見されます。
ですから私たちは“代弁者”ではなく、喜んで“代聴者”になります。
安全に関する法令対応を含めて、全国的にやることは同じでも、「できない理由」は各社毎に違います。
それは同じ会社内でも事業所毎に違います。
研修の効果を高めるためにも「できない理由」を解決することが先決であり、その上で「やるべきこと」に取り組むと効果が早く表れます。
だから私たちは、愚痴や文句に含まれる「できない理由」に耳を傾けることから始めています。
「できない理由」にも必ず意味があると信じて。
すべては安全を手段としてドライバーの健康を守るために。
さらには品質を手段としてドライバーの生活を守るために。
ありがとうございました。
次回は4月17日(金)を予定しております。
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