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第49回 業績向上と社員教育
運送会社における社員教育には題材選びと合わせて、主に二つの学び方があります。
- 貴重な自社の経験(特に失敗経験)から学ぶ方法
- 豊富な他社の事例(特に成功経験)から学ぶ方法
弊社は運送会社が開催される社員研修で講師を担当していますが、対象者は主に二つの職種に就いている方々です。
- 実際にトラックに乗務しているドライバー
- ドライバーへの指示や指導に従事している管理者
それぞれの職種別の教育目的(目指すゴール)は下記の二通り。
- ドライバーには「自分ができるようになってほしい」
- 管理者には「誰かに伝えられるようになってほしい」
教育スタイルは、下記の二パターンが代表的です。
- 講師が一斉に伝える研修スタイル
- 参加者の発表機会が多い勉強会スタイル
研修と勉強会の“カタチの違い”は「参加人数と座席配置」。
勉強会とは会議やミーティングと似て、全員の意見を聴いて考え方を広めて、全員が発言することで考え方を強くすることを繰り返します。
『各運送会社の業務内容や会社方針に応じて、最適な社員教育の方法が有るはずです。』
たとえば誰でも参加できる公開型セミナーに参加時には、自社に見合う教育方法や教育項目を探してください。
公開型セミナーの開催方法を自社に置き換えて考えることで、社員教育開催に関する「取り決め」が発見できます。
公開型セミナーの開催内容を自社で発信することで、社員教育の「取り組み」が開始できます。
「取り決め(社内ルール)×取り組み(指導)=結果」です。
教育方法は、他社の良い方法のマネをすることから始めることが得策。
本来、教育とは“誰かのマネをさせる(誰もが同じようにできる)”ために実施することが多いのですから。
「あの人のようになりたい」「あの技術を身に付けたい」と具体的に自身のありたい姿を描けることも、マネをすることから始める教育方法のメリット。
さらに管理者教育の必要性については、管理者自身が“作業”ではなく“仕事”に取り組む際にお感じになられることが多いようです。
以前から決まったことをやるだけでなく、自分で考えて主体的に動く時。
目に見えている今日のことをやるだけでなく、明日以降のことを考えながら動く時。
役職が上位になればなるほど「先を見据えて動く」ようになるのは必然。
先のことを予測するには、豊富な経験や正しい知識(新しい情報)が有効であり、その経験や知識は管理者にとっての「生涯の武器」になります。
その武器を教育機会で手にする(もしくは自らの失敗経験により手にする)ことができるのです。
外部のセミナーへの受講費用は、個人的な理由で就業時間外に参加する場合を除き、会社が負担されることが多いと思います。
学生時代には、学ぶことには“授業料”が掛かったものです。
社会人になれば学ぶ人が受講料を負担しない上に、学んでいる時間も就業時間内とみなして給料が支払わられる対象になることも。
その代わり、社会人には学んだ結果を会社に還元する義務が発生します。
学生時代には、その結果は自分の責任として、他の人から責を求められることはございません。
“還元する義務”を差し引いても、社会人になっても教育を受けられることは“素晴らしいこと”です。
「管理者=教育者」になるために教育を受けることが義務ならば、「仕事が忙しいから」等の理由で教育を受けられないことは、学ぶべき年頃に就学できないことと同じぐらいに悲しいこと……。
教育機会とは、会社からの“愛情表現”の一つです。
また、競争の場とは社内ではなく社外であり、同業者との戦いだけではなく、時に荷主のご担当者様をも上回る感性が必要です。
だから運送業界においても「教育機会なくして業界の未来は無い」と考えています。
特に運送会社においては事業拡大と同様に、交通事故防止に代表される安全教育が必要であること。
事業計画と、教育計画の質(利益=安全)と量(売上=品質)が比例していること。
社外で多くの時間を過ごすドライバーの職業特性上、一斉の教育機会(研修開催や掲示物活用)だけでなく、個別の確認機会(点呼や対話)による理解が求められること。
事故発生時には会社が受けた重大な警笛として、全員が本気で受け止めること。
言うまでもなく、ドライバーは公道の上で同じ安全行動を繰り返すことを求められます。
交通事故を二度と繰り返さないために、安全教育を何度も繰り返しましょう。
社外で二度と繰り返さないために、社内で何度も何度も繰り返すのです。
ありがとうございました。
次回は6月12日(金)を予定しております。
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