第26回 かもしれない管理

長距離運行を担当するドライバーに対しては、特に重大事故の発生を心配しています。

居眠り運転による高速道路上での多重玉突き事故など。

事故の結果としては、事故件数よりも事故金額が目立つ傾向です。

地場運行を担当するドライバーには、軽微な事故が多発することを心配しています。

構内でのバック走行時に、慣れや焦りの心理が起因する接触事故など。

事故の結果としては、事故金額より事故件数が目立つ傾向です。

さて、皆様の会社では「重大事故と軽微な事故の違い」について、どのように区別していますか。

私は「重大事故と軽微な事故とは結果が違うだけで原因に違いはない」と考えています。

事故の大小とは事故発生の瞬間の状況によって、後から決まるもの。

たとえば人身事故と物損事故の違いとは。

事故現場で偶然にも人が居れば人身事故で、人が居なければ物損事故。

当方に過失がある場合の車同士の接触事故でも、相手が回避してくれたら軽微な事故で、相手が回避できなければ重大事故。

前方不注意や確認ミスなどの原因は同じでも、事故の結果は周囲の状況により変わるものです。

結果的に軽微な事故として扱う損害の範囲だからと「以後は気をつけて」など口頭注意レベルの対策で終わらないように。

対策を構築時には事故の「結果」を重視するのではなく「原因」を重視しましょう。

すべての事故を軽微な事故とは考えないことです。

「周囲の状況によっては重大事故になっていたかもしれない」と考えましょう。

ドライバーに勧めているのは「人が飛び出してくるかもしれない」などの「かもしれない運転」

同様に管理者に求めるべきは「人が飛び出してきたら重大事故になっていたかもしれない」などの「かもしれない管理」です。

前回のコラムで「交通事故が発生したらドライバーの責任」であり「交通事故を防止できなかったのは管理者の責任」とつづりました。

しかし、1件の交通事故が結果的に世間を騒がせるような大事故になれば、それは会社全体の責任を問われます。

なぜならば・・・。

全国放映の記者会見で無数のフラッシュを浴びながら世間に向けて謝罪するのは、事故を起こしたドライバーでも防止できなかった管理者でもなく社長ですから。

「保険会社にお世話になった事案は事故件数に入れるが、自社内からの捻出により処理した事案は事故件数に含まず対策も講じない」との姿勢も散見されます。

結果的に「軽微な事故だから」と安全を軽んずるなら、いつか重大事故が発生するというのは“85年前から唱えられている有名な法則”の通りです。

事故は原因を憎んで結果を問わず。

どうか皆様、ご安全に。

ありがとうございました。

次回は6月13日(金)更新の予定です。

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この記事の著者

株式会社プロデキューブ 代表取締役

高柳 勝二

運送会社の管理者育成と安全教育をサポートしている株式会社プロデキューブの代表取締役。
前職は中堅運送会社にドライバーとして入社し18年間勤務。
安全管理・品質管理・開発営業などの実務経験が豊富な物流インストラクター。
現在ではドライバーの交通事故防止による利益確保と輸送品質の向上による単価の向上で得た原資によって、働き方改革を実現するまでを事業領域として、現場を親身にサポートしている。
中小運送会社からの依頼が多い“提案型”研修は、受講されたドライバーや管理者からの「おもしろい・眠くならない・わかりやすい」との評判が口コミで広がり、各社内で開催される社員研修の外部講師として全国45都道府県で講演。
また、全日本トラック協会主催の「全国トラック運送事業者大会」における交通安全対策推進の分科会で、7年連続コーディネータを担当(2013年札幌開催:2014年福岡開催:2015年金沢開催:2016年度米子開催:2017年仙台開催:2018年高松開催:2019年千葉開催)。
2013年度:全日本トラック協会「トラック運送事業における運行管理者のあり方研究会」委員
2015年度:国土交通省「自動車運送事業に係る交通事故対策検討会ワーキンググループ」委員
2016年度:「貸切バス運転者に対して行う指導及び監督の改正検討ワーキンググループ」委員
2016年度より現在:国土交通省「自動車運送事業に係る交通事故対策検討会」委員
2017年度より現在:熊本県トラック協会 専門アドバイザー(企業経営・労務管理)
各都道府県のトラック協会や青年部会、支部や協同組合単位での各研修会で講演多数。
プロデキューブ
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