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第19回 交通事故報告書の書き方と見方
仕事柄、各運送会社で交通事故報告書(事故記録)を拝見する機会があります。
交通事故が減らない運送会社の事故報告書には、ある共通点があります。
その共通点は交通事故が少ない運送会社とは、明らかな違いがあります。
たとえば交通事故が減らない運送会社の事故報告書では・・・。
・詳細な見取り図がない
・事故発生時の天候や道路状況が未記入で、発生日時の時間すら不明瞭
・事故発生に至るまでの運行状況に関する情報がない
・「弁金を負う」腹立たしさからか、ドライバーの反省コメントがない
・「自分のせいではない」と思っているのか、管理者のコメントがない
最も目につくのは・・・空欄。
次に目につくのは・・・「これから事故をしないように気をつけようと思います」等のドライバーの抽象的なコメント。
「何に気を付けるのか?」「何をすることで二度と事故を起こさないのか?」を、管理者と一緒に考えるべき。
原因を探究しないことで対策が生まない事故処理は、体調が優れないので病院に行ったが病状が判明せず、お医者さんに「原因がわからないので様子を見てください」と言われて不安になるのと同じこと。
「なぜ事故が起こったのか?」がわからないままトラックに乗務するのは、それほど不安で危険な行為です。
他には「近日中に緊急ミーティングを開催予定」と掲げるだけで、ミーティングの議事録を追報することもなく、開催の確認や催促をすることもなく。
管理者による「安全意識を向上させます」や「徹底して強化します」等、聞き心地は良いが意味の無い表現の結びの言葉。
それらの中途半端な報告書にも、経営者がテキトーな捺印をして完成。
これでは弁金支払いや給与控除の事務手続き行うための「費用報告書」
・事故発生状況欄は「あいまいな表現で意味不明」
・原因欄は「すみませんでした」
・対策欄は「これからは気を付けようと思います」
これではまるで、三行広告ならぬ三行報告(笑)
「事故が多いから丁寧な報告書が書けないのか?」もしくは「丁寧な報告書が書けないから事故が多いのか?」
私は後者だと思います。
事故報告書が雑な運送会社は、安全活動も雑になりがちです。
当社には事故の再発防止を目指すための「事故報告書フォーマット」があります。
特徴は・・・。
・記入する項目が多くて作成時間を要するために、とにかく面倒
・特に管理者(運行管理者を含む)の記入欄が多い
・事故の原因を何度も掘り下げて考えることを求める
・失敗(交通事故)を元に気付いた対策→社内の安全ルールに反映
その運用方法は・・・。
例えば現在は2月。
昨年の2月に発生した事故事例について管理者とドライバーが確認して事例に学ぶ。
「昨年の2月に事故が発生していなければ一昨年の2月に発生分で確認」との運用方法。
同時期に同じような仕事をしている先人が、失敗した事故事例が“詳細に”記載された事故報告書。
これは最もコストが掛かっていて、最も身近で参考になる“至高の安全教材”
その“安全教材”はその運送会社が続く限り有効に活用できます。
5年後でも10年後でも事故報告書を見れば原因と対策が一目でわかる事故報告書を作成しましょう。
事故発生当時に在籍していなかったドライバーにも「なぜ現在の社内ルールができたのか」が伝わり、納得できるように。
そして“安全教材”には多くのコスト(事故処理の直接費用と間接費用)だけでなく、ドライバーの命や生活が掛かっていることも、どうかお忘れなく。
最後に・・・。
『交通事故報告書でお名前が挙がるドライバーは商品事故報告書でもお名前を拝見することが多い』
やはり前回のコラムで紹介した“プロデキューブ版ヒヤリハットの法則”の通りです。
ありがとうございました。
次回は3月7日(金)更新の予定です。
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